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新宿駅東口の目の前の「自家焙煎珈琲 凡(ぼん)」は1985年創業。それからもうじき40年になろうという老舗喫茶です。
”コーヒー1杯995円”、”新宿で最も高いコーヒー”、”幻のショートケーキ”、”電脳麗磁(でんのう・れじ)”、”レジはMacintosh(マッキントッシュ)、”オーナーが平さんだから凡”。
これらは全部、珈琲 凡が紹介されるときのキーワードです。凡という店名なのにこうしたキーワードから浮かぶイメージはとても平凡な喫茶店などではありません。
▲実際この「珈琲 凡」は開業以来、その筋の人たちの間では常に話題となるような喫茶店なのです。
店舗は新宿駅東口の目の前、新宿通り沿いという立地なのですが、店舗は地下。地上には看板が1枚出ているだけなので、よほど注意していないと知らずに通り過ぎてしまうかも。
典型的な、知っている人は知っているけど知らない人は全然知らない、しょっちゅう通っていても気にもされない喫茶店です。
パンデミックを経てもうじき創業40年になろうという「珈琲 凡」を訪問し、噂や気になるキーワードの実態を見てきました。こちらも20年ぶりくらいの訪問です。
立地と歴史
珈琲 凡の創業は1985年(昭和60年)。
店主は当時も今も変わらずコーヒーを淹れ続けいて、これまでに淹れたコーヒーの数は100万杯。
そしてこれまで凡を取り上げ掲載したメディアの数は数知れず。凡が変わっているのは飲食、ライフスタイル系メディアだけでなくIT系メディアにも取り上げられてきたことでしょうか。
▲珈琲 凡の場所はここ。
新宿駅東口のスクランブル交差点のところです。行き交う歩行者の数は毎日20万人くらい。でも、その中で凡を知っている人、訪問したことがある人はとっても少ないでしょうね。
なんで行き交う歩行者の数が分かるかというと、凡の隣のビルの屋上には、巨大な3Dの巨大猫が出てくることで有名な「猫ビジョン」という屋外広告があるのです。その広告資料を見ると、2022年の歩行者数は平日で19万人、週末で23万人と書かれているのです。
パンデミックの不安が残る2022年でその数字ですから、インバウンドが完全に戻った2023年からは普通に30万人くらいが行き交っていくるのではないでしょうか。歩行者の数としては渋谷のセンター街とほぼ同じくらいの数字です。
そんな駅前の一等地に立地するのが珈琲 凡なのです。
店構え
新宿東口の駅前といっても普通の小さな商業ビルの地下ですから店構えというほどのものはありません。
▲かなり傾斜が強く回り込みながら階段を降ります。
食べログの百名店のシールが貼ってありますね。
▲階段にはいろいろ貼られています。
店主のこだわりポイントが列挙されています。ほぼ同じものが小冊子になって店内にも置かれていますから、席に着いてからゆっくり読んでみましょう。
▲今は「珈琲 凡」。開業当初は「凡 弐番館」という店名でしたがいつの間にか今の名前に変わっていました。
ちなみに ”オーナーが平さんだから凡” というのは都市伝説でもなんでもなくて本当の話です。
店内
店内は平日でもかなり混んでいるので目の前のコーヒーやケーキ以外はほぼ撮影不可です。
本当はカウンターの大きな1枚板のテーブルとか、やはり巨大な1枚板のテーブル席とかも見て欲しいのですが。
店内はとにかく実際に訪問してみてください。
ただ大昔は静かな大人の高級喫茶店だったと思うのですが、今は常連さんを除くと噂の百名店喫茶店を訪れたことでテンションの上がったお客さんが多くてけっこううるさいです。
▲凡のこだわりポイント!
レインボーカラーのAppleマークが入ったカードでピンと来ますね。
昔はMacintosh Plusという旧いコンパクト型Macがキャッシュレジスターだったのです。動いているソフトの名前は ”電脳麗磁(でんのう・れじ)”。もしかしたら日本最古のMac用業務ソフトウェアだったのかもしれません。
しばらく前にそのMacintosh Plusも引退し、今は同じApple社のiPadがキャシュレジスターを兼ねています。動いているところを見たらアプリ名はやはり ”電脳麗磁” となっていました。ファイルメーカーをカスタマイズしたのではないでしょうか。
▲凡のこだわりポイントその2
今も使えそうなピンク電話、そして本棚。
そして、もしトイレに行きたくなったらこの辺りを探ってみてください。まさに隠しトイレです。
結果的にこうなったのではなく、最初から遊び心でこういう設えになっているのです。
▲凡のこだわりポイントその3
カウンターの後に並ぶ膨大なカップ。その数は1,500客以上。
100年ほど前のカップを中心に少しづつ集めたものだそうです。お客さんに合わせてカップを選んでくれるので、どんなカップで出てくるのかもお楽しみポイントです。
▲テーブルの上には置かれたガラス製のランプ。年月を感じるやつれ具合がいい感じです。
左のサーモス(THERMOS)のカップはお水です。ガラスのコップではなくTHERMOSにたっぷり冷水を入れて出すところもこだわりです。
▲テーブルにはこのような小冊子が置かれていて、コーヒーのうんちく、なぜMacintoshなのか、カップのこだわりなどが綴られています。
メニュー
メニューはコーヒーとソフトドリンクとケーキだけ。
トーストとかの軽食類は一切ないのが潔いです。
▲コーヒーのメニューです。
一番安いブレンドが1,300円。
たぶん、これで駄目という人も多そうです。でも実際にはポットで出てくるし、そのことは店内あちこちに書かれています。実質2杯飲んで1,300円なので目の玉が飛び出るほど高い訳ではないです。
”新宿で一番高いコーヒー” というのは開業当時はそうだったかもしれませんが、今はちょっと怪しいですね。
その新宿で一番高いと言っていた最初の頃はコーヒーは1杯995円でした。
レジ横の大きなガラス鉢に5円玉がぎっしり詰まっていて、千円札で払うとお釣りが5円。つまり”ご縁(5円)” がありますように(リピートしてください)という店主の洒落だったのです。今は特に意味もない価格になってしまいました。
▲これは紅茶とジュース類のメニュー。
メニューはぜんぶひらがなというのもこだわりですね。
▲こちらがケーキメニュー。
黒糖のシフォンは今は提供停止中だそうです。
「苺のしょーとけーき」が一時は幻とも言われたショートケーキです。1日に16切れしか作らないのであっという間に売り切れるとか。でも1,000円だった頃はともかく、今は1,600円もするので平日ならそう簡単に売り切れることはないと思います。
▲凡のこだわりポイント。
ミルクは2種類。凡で使用するのは動物性の本物のミルクとクリームです。
ただ今どき何でもすべて動物性という訳にはいかず、コーヒーに入れるミルクだけは植物性も選べます。
オーダー
この日はブレンドコーヒー、アイスコーヒーそれと苺のショートケーキをオーダーしてみました。
▲苺のショートケーキはイチゴジャムがかけられて苺づくし。
右はアイスコーヒーです。
上から見ると普通のショートケーキとアイスコーヒーですが横からみると印象が一変しますよ。
▲動物性クリームの中に埋め込まれた苺。大粒のものが2つ。半分にカットして計4切れが入っています。
クリームの高さもすごいですね。
ボリュームがあるので2人で1個をシェアしても全然問題ありません。
この日は平日の午後3時という時間でしたが、ちゃんとショートケーキは残っていました。
▲これはアイスコーヒー、水出しコーヒーだそうです。
茶碗に入って出てきます。もちろんそれぞれのお客さんに合わせて店主が選んだ茶碗です。
ミルクなどを入れても良いのですが、ブラックのままコーヒーの味を楽しむことができるアイスコーヒーです。
▲こちらはブレンドコーヒー。
まずカップの生産国、メーカー、柄名が書かれたカード付きで出されるので器や絵柄を楽しんでいるうちにポットに入ったコーヒーが出てくるというシステムです。
ポットにはコーヒーが2杯分は入っています。
ちなみにこのカップは英国エインズレイ(Aynsle)社のものだそうです。
ポイント
単に値段が高いのではなく、コーヒーにもこだわりがあるし、店内にも遊び心がある仕掛けがあったりと楽しく時間を過ごせる喫茶店です。
内装も80年代からあまり変わっていなくてレトロ感もあり、幻のショートケーキのような話題性のあるアイテムもあるなど、語り始めたらネタはいっぱいある喫茶店です。
その値段から敬遠してしまう人がいたとしたら勿体ない。高いのにはそれだけの理由があるし、珈琲 凡はその理由に納得してお金を払える喫茶店だと思います。
5円のお釣りももらえないし、レジはMacintoshからiPadに変わりましたが、店主の遊び心や洒落っ気は変わりませんし、コーヒーは40年にわたって磨き続けたものです。昔行ったことがあるよという人も初めての人もぜひどうぞ。週末は混んでいると思うので可能なら平日に訪問してみましょう。
基本情報
店名 | 自家焙煎珈琲 凡 |
住所 | 新宿区新宿3丁目23−1 MAP |
最寄駅 | JR新宿駅駅東口前。徒歩1分 |
定休日 | なし |
営業時間 | 12:30 – 18:00 |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
営業時間、定休日などは変更になる可能性があります。