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昭和の時代に誕生した様々な業態。純喫茶、エスニック、カフェバーなどの飲食系から健康ランドやカラオケにボーリングなどの娯楽産業。純喫茶のようにその良さが見直され再評価されるもの、アップデートしながら時代に合わせてきたカフェバーやラーメン店、そしていつの間にか消えてしまったもの。
その消滅しつつある業態の一つが「ステーキハウス」。平成に入り牛肉の輸入が自由化される前は牛肉を使ったステーキというのは高級品でした。アメリカを始めとする欧米の食文化への憧憬を具現化した料理として ”ビーフステーキ” というのは単なる高級料理以上の意味を持っていました。
特にアメリカ西海岸のナチュラルでワイルドな風土を日本流に解釈したウッディな店舗にカジュアルなスタイル、そしてステーキを始めとした肉料理を提供するステーキハウスという形態は一世を風靡して、都内でもあちこちにこうしたスタイルのステーキハウスがあり、地方でも特に観光地のロードサイドには必ずこの手のお店があるものでした。
今はステーキというとウルフギャグやピーター・ルーガーのような本物のステーキハウスから価格コンシャスで安価な肉料理まで選択肢が豊富になったせいか、昭和の時代の ”ステーキハウス” はほとんど見かけなくなってしまいました。
そんな中で都心の千駄ヶ谷という街で今も残る「CHAKOあめみや(チャコあめみや)」を訪問してみました。
立地と歴史
千駄ヶ谷の東京体育館のほど近く、つまり国立競技場にも近い場所に位置する小さな商業ビルの地階にあります。
JRの千駄ヶ谷駅から徒歩数分、北参道の駅からも徒歩数分という好立地ですが、観光客やビジネスパーソンが行き交うような華やかなイメージは全然ない、普通の街の商店街の一角です。
開店は1979年(昭和54年)年ですから既に40年以上。
でもこの手のステーキハウスがほとんど絶滅した今でもこうして元気に営業し、しかも平日でも行列ができるほどの人気を誇っているのはきっと何か秘密があるに違いありません。
店構え
普通の商店街の小さな商業ビルの地下ですから店構えというほどのものはありません。
強いて言えば年季を感じさせる ”炭焼ステーキハウス CHACO AMEMIYA”という文字が刻まれた木製の看板くらいでしょう。その看板からして昭和の時代のステーキハウスでよく見かけたログハウス風のものです。
▲店舗の入り口は階段を下りた先。
階段は踊り場にウエディング用の椅子が置いてあったりメニューが貼り出されていたり注意書きが書かれていたり。そうした手作り感を感じさせるところもチェーン系のステーキ屋や流行りのオシャレ系ステーキハウスとは違った愛おしさがあります。
店内
店内に足を踏み入れるとすぐに気づくのが店内にもうもうとしている煙。
ステーキハウスは肉を焼いているのだから煙があるのは当然。
▲煙の出どころはこれ!
炭焼きステーキを謳っているのだから炭で肉を焼くのは当然なのですが、実際に釜が客席の隣にあるのは珍しいでしょう。
肉を焼く責任者はおそらくオーナーシェフの方。年齢からすると二代目、もしかしたら三代目かもしれません。
店内に入ってすぐ左手にありますからどうやって焼いているのかじっくり見てみましょう。
やはりこうしたエンターテインメント性は大事ですね。
CHACOあめみやが生き残った秘密の一つでしょう。
▲店内は白いシートがかけられた客席が多数。
パンデミック以前はもっと客席は多かったかもしれませんが、今はこのような客席レイアウトです。
そして壁のレンガなどは煙がいい感じに染み込んで雰囲気を出しています。
まさに昭和の時代、そこかしこにあったステーキハウスの雰囲気です。
この昭和レトロで絶滅種のステーキハウス感が人気の秘密その2だと思います。
メニュー
ランチ営業は平日だけ、週末はディナー営業だけという変則営業で、今回訪問したのは平日のランチタイムです。
▲地下へ降りる階段脇に掲げられたCHACOあめみやのマニフェスト。
内装、ワインそしてステーキ。どれもこだわりがあるようです。
▲ハンバーグランチのお知らせ。
ハンバーグが食べられるのはランチだけ。そして限定40個だそうです。
ただ店内はさほど広くはないので、よほどのことが無い限りライチタイム中にハンバーグが売り切れることはないと思います。とはいえ、ランチタイムの3巡目には売り切れる可能性が無きにしもあらずですから、ハンバーグを食べに行くなら早い時間で。
▲こちらがランチメニュー。
ハンバーグはダブルにできるそうです。
ステーキはリブステーキ、ヒレステーキ、サーロインステーキの3種類。
リブ/ヒレ/サーロインという肉腫の設定も昭和ですね。これも創業当時から変わってないのではないでしょうか。
オーダー
この日はハンバーグランチとヒレステーキをオーダー。
▲どちらもサラダとライスまたはパンが付いてきます。
▲レア感たっぷりなハンバーグ。
付け合せはポテト、人参、さやいんげん、コーン。
ほとんどつなぎを使っていないような肉肉しいハンバーグですが、70年代80年代のハンバーグ屋はこんな感じだったのでしょう。
▲そしてヒレステーキ。150g。
女性にはジャストなサイズですが、男性や育ち盛りの若い人には物足りないかも。200gでオーダーするのが良いかもしれません。
今風なビーフの赤身の味を楽しむタイプではなく、70年代風な高級な肉としての牛肉。やはり当時はこれがザ・ステーキだったのでしょう。
ポイント
炭焼きの現場を見られるというところもポイントですが、今回実際に訪問して分かったのが店舗や内装だけでなくステーキもレトロだというところ。
昭和の時代に高級料理だったビーフステーキの味とスタイルが今もここには残っているのです。
若い人にはもうもうとする煙の中で炭焼きのステーキをがっつり食べられるということで人気があるのも分かりますが、今や絶滅危惧種となった70年代ステーキハウスと日本人向けに解釈した昔風ステーキが当時を懐かしむ人たちからもウケているのだと思います。
千駄ヶ谷の美味しいステーキハウスとして利用するのも良いですが、昔はこんなステーキハウスがあったよなぁと記憶を蘇らせたい方はぜひ訪問してみてください。
基本情報
店名 | CHACOあめみや |
住所 | 渋谷区千駄ヶ谷1丁目7−12 MAP |
最寄駅 | JR千駄ヶ谷駅から徒歩4分、東京メトロ北参道駅から徒歩7分 |
定休日 | 月曜日、第1日曜日 |
営業時間 | 11:30 – 14:00 (火曜から金曜のランチ) 17:00 – 22:00 (火曜から土曜のディナー) 17:00 – 21:00 (日曜日) |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
営業時間、定休日などは変更になる可能性があります。