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信州上田の駅前。というと森繁の駅前シリーズに出てくるような田舎の駅前をイメージしてしまいますが、上田駅は新幹線が停まり広いロータリーもある近代的なものです。
その上田駅からちょっと脇に入ると今度こそ駅前シリーズに出てきそうな路地があり、そこに今回紹介する「とんかつ 力亭(りきてい)」があります。
地方の駅前のとんかつ屋ですから観光客や商人を相手にした味はそこそこ、コスパが良ければ全て良し。そんなとんかつ屋を想像しがちですが、なんと「力亭」は食べログのとんかつ百名店の常連店。
軽井沢からも近く(車で1時間弱)、戦国時代の真田家以来の歴史もある上田は趣のあるお店や場所も多くお気に入りの街なのですが、この力亭は今回が初めての訪問です。
立地と歴史
今はとんかつ百名店として有名な力亭ですがその開業がいつかはよく分かりません。上田出身の人にも尋ねたところ昔からあるわけではないようです。
店舗外観こそリフォームされていますが店内や建物自体の感じからは、新しくても1990年代。おそらく1980年代の開業という趣なのでおそらく昭和の開業であろうと思われます。
そして、上田の力亭を語る時に外せないのが、店主が上野のとんかつ屋「双葉」で修行したという点です。
日本で ”とんかつ” が普及したのは ”上野の御三家” と称されたとんかつの名店3店のおかげというのが定説。「ぽん多(ぽんた)」、「蓬莱屋(ほうらいや)」そして「双葉」。
御徒町の蓬莱屋はあの小津安二郎が贔屓にしていて、遺作「秋刀魚の味」では蓬莱屋の店内を再現してしまうほど。実は私も蓬莱屋のとんかつは大好きです。
同じく御徒町の「ぽん多」は今も営業していますが、本当に上野にあった「双葉」は10年以上に前に閉店しています。
その「双葉」で修行した店主が上田で開業したのが「力亭」なので上野の御三家直系の味が上田で楽しめるのかもしれません。
▲上田のお城口側駅前ロータリーから竹風堂のある角を入っ先に力亭はあります。
駅から徒歩1分。車の場合は100mほど離れた新幹線の高架下に駐車場があります。
力亭の店内
外観はリフォームして10年くらいな感じですが、ではその店内はどうでしょう。
▲カウンター席とテーブル席。そして奥には小上がりがあります。2階へ上がる階段も見えたので、混んでくると2階席にも案内されるのでしょう。
テーブルもカウンターも年季が入っているように見えます。その年季の入り具合からすると30〜40年は経っているのではないでしょうか。
そしてとんかつ屋というより長野によくあるそば屋みたいな雰囲気も感じますね。いわゆる重飲食なとんかつ屋なのに油っぽさが感じられないのです。
▲こちらは小上がり。4人席が2つ。
お客さんは地元と思われる方々、名店巡りをするグルメ修行僧みたいな方々が多く、何も知らない私たちみたいな観光客は少数派です。
力亭のメニュー
メニューはシンプルです。
基本はとんかつ。あとはその種類とコンビネーションを決めるだけ。
▲見事にとんかつばかり。
あとはヒレにするかロースにするか、サイズはどうするか、エビフライを付けるか付けないか。
そしてロースカツ定食が1,780円という価格。長野の上田の駅前のとんかつ屋でロースカツ定食がこの値段?です。
参考までに、六本木ヒルズの豚組食堂でロースカツランチを食べても1,650円です。
なお、キャベツのお代わりは無料です。メニューにはライス大盛り120円と書いてありますが、今回は無料で大盛りにできました。ランチタイムだったからかもしれません。
オーダー
ヒレかロースかは個人の好みなので、今回はヒレカツ定食 1,880円(税込)をオーダーです。
▲ご飯は普通盛り、そして時計回りに山菜の漬物、豆腐と三つ葉の味噌汁、漬物。
漬物が豊富なのが信州らしい。
得てして味噌汁にも豚を入れてしまって油こってりにしがちなとんかつ屋と違い、あっさり上品な味噌汁なのも好みです。
そして中央に鎮座するヒレカツ。
豚ヒレ肉を丸ごと揚げているのですね。厚みもあってボリュームたっぷり。これなら1,880円も納得です。
むしろ都内のとんかつ名店なら普通に2,500円くらいしそうです。
▲ヒレかつは縦に切り目が入っています。衣が薄くてカリカリで、全然脂っこくなくて食が進むんですよねぇ。
各テーブルにはソースと塩が置かれているので好みでどうぞ。
でも肉の味が美味しいのでまずは塩でいただくのがおすすめです。
▲厚い豚ヒレ肉の中までしっかり熱が通っています。
何でも低温の油でじっくり時間をかけて揚げるのだそうです。なるほど、店内があっさりしているのはそれが理由だったのですね。
さて、肝心の上野の「双葉」の味と比べてどうなのか。残念ながら私は「双葉」の味を知らないのでなんとも言えません。でも双葉で修行云々を抜きにしても百名店に選ばれるだけのクオリティの高いとんかつでした。
上田でがっつり食事をするならまずはおすすめのお店かもしれません。
双葉の暖簾
力亭のポイントは上野の名店「双葉」との関連と思っていたのですが、もうそんなことは関係なく「とんかつの力亭」として評価すべきなのでしょうね。
店主の年齢からすれば双葉で修行したというのは何十年も昔の若い頃の話。その修業で得たノウハウをさらに発展させたのが今の力亭なのではないでしょうか。
▲今でも力亭には上野の双葉から贈呈された暖簾が誇らしげに掲げられています。
でもこれは力亭のあくまで原点の一つ。そこから次の世代へさらに発展しようとしているのだと思います。
何年かに一度、様子を見に再訪してみたいものです。
基本情報
店名 | とんかつ 力亭(りきてい) |
住所 | 長野県上田市天神1丁目2−32 MAP |
最寄駅 | 上田駅お城口徒歩約3分 |
定休日 | 月曜 |
営業時間 | 11:00 – 14:00、 17:00 – 20:00 |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 (店外に灰皿あり) |
営業時間、定休日などは変更になる可能性があります。