まるで洞窟にいるような不思議な空間。吉祥寺の老舗「コーヒーホールくぐつ草」

吉祥寺のダイヤ街の地下で創業から40年以上も営業を続ける老舗喫茶店「COFFEE HALLくぐつ草」。

1979年春に開店してから吉祥寺の人気店であり続け、70年代中央線文化の残香を今も感じさせる店として地元の常連だけでなく新しいファンも獲得し続けている吉祥寺を代表する喫茶店です。

立地と歴史

創業は1979年(昭和54年)。江戸時代から続くあやつり人形劇団「江戸糸あやつり人形劇団 結城座」の劇団員たちによって開店したのだそうです。

当時の店名は「くぐつ」というものでしたが、その後「くぐつ草」と名前が変わったそうです。

▲「くぐつ草」と名前の入った看板も年季が入ったもの。

よく見るとシルクハットを被った操り人形ですね。この辺りからも店名の由来などが伺えます。

”くぐつ” という珍しい名前は漢字で書けば「傀儡」。”かいらい” とも読みます。もともとは日本の漂泊の芸能者集団を表す言葉だったようですが、その後は特に操り人形の人形つかいを「傀儡子(くぐつし)」と呼ぶようになり、その人形劇団の劇団員たちが始めた喫茶店なので「くぐつ」となったそうです。

店構え

「くぐつ草」の店舗は吉祥寺ダイヤ街のアーケードの下、さらにビルの地階になります。

▲地下の洞窟に続く階段のようでもあり、地下の劇場に下りる階段かもしれず。

なんとも雰囲気のある階段をくださった先が「くぐつ草」です。

店内

”洞窟のような店内”。くぐつ草を紹介する時によく使われるフレーズですが実際にその通り。

▲階段から店内を覗いたところです。洞窟のような仄暗い店内に照明が灯り、テーブル席がいくつか。

カウンター席も用意されています。

さらにその奥は大きな窓になっていて中庭の緑が見えますから、閉所が苦手な人でも大丈夫だと思います。

▲そのテーブル席はすべて木製。

十分な大きさのテーブルにやや小ぶりな椅子。

たぶん創業時から使い続けているものだと思います。

▲各テーブル横の壁には四角い穴が空いていて、たぶんですけど人形劇の舞台を模しているんじゃないかなぁと思います。

それにしても洞窟感というか穴倉感が良いですねぇ。

パリの古い喫茶店、ファンタジー映画の居酒屋、いろんなシチュエーションが思い浮かびます。

▲テーブルの上には簡単なメニューが置かれているので、常連さんはこれを見て今日は何にしようかなぁと悩むのでしょう。

それともう一つの注目は椅子の背もたれのくり抜き。椅子ごとにくり抜きの形状が異なるのです。

少し前に紹介した本郷の「喫茶ルオー」はコーヒーカップ型のくり抜きがされていましたし、1980年前後にはそうした椅子のデザインが流行していたのかもしれません。

メニュー

さてメニューですが革装の本格的なものが用意されています。

▲コーヒーのメニュー。

フレンチローストなのでそれだけでもかなり濃いのですが、それのさらにストロングですから濃くて苦いいかにもなコーヒーです。

これ以外にもコーヒーのバリエーションに紅茶やソフトドリンクなどメニューがあります。

▲こちらは食事のメニュー。

カレー、特にオムカレーが名物だそうです。

もう一つの名物がレアチーズケーキで、手作りデザート類も充実しています。

▲11時から14時までのランチタイムは「オムカレーセット」。

通常1.400円のオムカレーに850円のコーヒーが付いて1,700円なので金額的にもお得です。

なお、くぐつ草での支払いは現金のみです。クレジットカード、QR決済、ICカードなどは使えません。

オーダー

今回は看板メニュー「オムカレーセット」をオーダーしてみました。

▲手作り感溢れるプロートに乗ってオムカレーが出てきます。

▲レンズ豆とココナッツミルクで仕上げた、でもちょっと辛いカレーの真ん中にライス。

フワフワのオムレツというかスクランブルエッグ。そして小さい頃にお母さんがお弁当に入れてくれたような、タコの姿に切り口を入れたウィンナー。

▲そして食後はフレンチローストのコーヒー。

今回はランチタイムの訪問でしたが、喫茶だけの利用でのんびり吉祥寺の時間を過ごすのも良さそうです。

ポイント

吉祥寺の老舗喫茶店だけあって、往年の吉祥寺の文化、雰囲気を今も残しているのがたまらなく愛着を持てる点です。静かに本を呼んだり、友人たちと静かに語り合ったり、好きな人とただ時間を過ごしてみたり。そんな使い方にピッタリな喫茶店。

そして地下の洞窟のよう店内は携帯電話の電波がほとんど入りません。デジタルデトックスをするにはここより適した場所はそうないかもしれません。

吉祥寺や中央線沿線でのレトロ喫茶巡りとして、またデジタルデトックスな時間を過ごしたい時にもどうぞ。

基本情報

営業時間、定休日などは変更になる可能性があります。